自由なアラサー小児科医の自由帳

都内でフリーランスに働いている小児科医のブログです。仕事、趣味、思ったことについて適当に綴ります。

多摩地区の小学生に百日咳が流行しています。

今年の6月頃より多摩地区の小学生を中心に百日咳が流行しています(東京都感染症情報センター » 百日咳の流行状況)ので、一般の方が知っておいてほしい情報をざっくり書いておこうと思います。

この記事のポイント 

・多摩地区の小学生を中心に百日咳が流行中。

・1歳未満は死に至ることもあるので、すぐに受診を。

・生後3か月になったらすぐに四種混合ワクチンの予防接種を。

・小学生前後の兄姉がいる赤ちゃんは特に注意が必要。

・就学前に三種混合ワクチンの追加接種が推奨された。

 

百日咳とは

百日咳はその名の通り長期(2-3か月)に渡って咳が続く百日咳菌による感染症で、咳やくしゃみで移っていきます(飛沫感染)。この感染症の問題点は1歳未満の赤ちゃん、特に6か月未満の赤ちゃんが感染したとき死に至ることもある(1%)ということです。お母さんからもらった免疫(経胎盤移行抗体)が十分でないため生後早期でも罹患することがあり、小学生前後の兄姉がいる赤ちゃんは特に注意が必要です。このため、生後3か月になったらすぐに四種混合ワクチンの予防接種を始めましょう。大きな子であれば放っておいてもいずれ治る病気ですが、このような理由から感染を広げないよう診断と治療が必要になってくる病気です。

 

診断と治療

どんなときに百日咳を疑っていくのか一般の方がわかりやすくざっくり説明すると、

1週間以上続く咳に加え、発作のように連続して咳が出る、咳をしすぎて吐いてしまう、咳をしたあと息を吸うとき笛のような音がする、呼吸が苦しいあるいは止まる、といった症状がある

このようなとき百日咳を疑いますが、1歳未満なら最初の1週間以上という期間の条件は要りません。熱はあまり出ませんが、このような症状がある場合、特に1歳未満の赤ちゃんならすぐに受診を考えましょう。

検査はいくつか種類がありますが、インフルエンザの検査と同じように鼻に綿棒を入れて行う検査(LAMP法)が最も正確かつ迅速とされています。ただし、インフルエンザのようにその日には結果が出ません。施設によっては数時間で結果が出るところもありますが、クリニックなどでは通常2-4日程度かかります。疑わしい場合は結果が出る前から抗菌薬の内服を始めます。ただ、発症してから既に1-2週間ほど経っている場合は抗菌薬を内服しても咳症状の改善はあまり見込めませんが、周りに移さないために抗菌薬治療はしなければなりません。

 

ワクチンについて

百日咳は三種混合ワクチンあるいは四種混合ワクチンで予防できますが、上記のように生後早期から罹患しうるので、生後3か月になったらすぐに予防接種を始めましょう

しかし、定期接種(0歳で3回、1歳で1回)通りに接種しても小学生前後から抗体が下がってきてしまいます。そこで日本小児科学会は今年8月、就学前に三種混合ワクチンの追加接種を推奨しました。ただし、任意接種であり公費では接種できないため、ご家庭ごとの判断になります。最初に述べたように、1歳未満の弟妹がいる就学前の子は接種がより推奨されると思います。接種するのであれば、通常年長さんの学年で接種する麻疹風疹(MR)ワクチン2期と一緒に接種するのも良いでしょう。また、同じような理由で、11-13歳での定期接種である二種混合(DT)ワクチンの代わりに三種混合ワクチンを接種することも承認されました(これも任意接種)。

ちなみに、ポリオも小学生前後から抗体が下がってくるため、三種混合ワクチンと同様に就学前に追加接種することが推奨されました。

 

参考

NIID国立感染症研究所 百日咳とは東京都感染症情報センター » 百日咳の流行状況小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール日常診療に役立つ小児感染症マニュアル2017